流れのシミュレーション,MEMS技術を活用したマイクロニードルおよび微細毛構造体の作製,フレキシブル熱電発電デバイスの作製について取り組んできました.詳細は以下の通りです.

【2014年4月~2017年9月】海水淡水化や浸透を利用した発電では,中空糸膜と呼ばれる中空状の半透膜(外径:160 μm,内径:60 μm)が数百万本巻かれた浸透モジュールが用いられる.本研究では,数値シミュレーションを利用し,浸透モジュール内の流れ解析を試みた.しかし,中空糸膜領域の抵抗特性が不明であったため,中空糸膜を並べたミニモジュールを独自に作製し,流速に対する抵抗特性を実験的に把握した.これを数値シミュレーションへ組み込み,流動解析を行うことで,海水や淡水の流速分布や濃度分布を得た.

【2017年10月~2020年4月】生分解性材料を用いた注射針,およびファンデルワールス力による吸着構造体を作製した.前者については,ナノインプリント法もしくはDrawing lithography法を適用することにより簡易に作製可能であることを示した.後者については,ファンデルワールス力を発揮する,ヤモリの足裏構造を模倣した直径約300 nmの微細毛からなる吸着構造体を,光造形型3Dプリンタにより作製した.一般的に3Dプリンタでナノオーダの成形物を得ることは非常に困難であるが,外部プログラムによりレーザの焦点位置を制御することで作製可能とした.また,作製した微細毛がファンデルワールス力を発揮し得ることを,高感度ロードセルを用いて明らかとした.2019年度の後半では,蚊の針を模倣した注射針をナノインプリント法で作製した.蚊の針は,その側面にギザギザ形状を有しており,スタンプ方式で構造体を作製するナノインプリント法には不向きであると考えられてきた.しかし申請者は,機械的に柔軟であるため,離型時に変形可能なポリジメチルシロキサン(PDMS)を型としてナノインプリントすることでギザギザ形状を有するマイクロニードルを実現した.

【2020年5月~現在】
人の健康状態をモニタリング可能なセンシングデバイスやウェアラブルデバイスへ給電可能な自律した環境発電デバイスのフレキシブル化が多く求められるようになった.現状のフレキシブル電子デバイスに関する研究は曲げ変形に関するものが多く,伸縮変形に関するものはほとんど無い.そこで応募者は“切り紙”の適用を提案した.切り紙構造は部分的に座屈変形や面内回転・面外回転を引き起こすことで硬い金属基板であっても高い伸縮耐性を発揮する.また,切り紙構造中に変形しない領域があるため,そこへ硬く高性能な半導体素子を実装可能である.これまで,環境発電デバイスの“構造”に着目して切り紙構造の適用を考慮した研究はほとんど無かったが,応募者は,切り紙タイプの熱電発電デバイスを作製し,伸縮できる熱電発電デバイスを実現させた.さらに伸縮性の獲得のみならず高性能化も同時に獲得した.

早稲田大学
基幹理工学部
機械科学・航空宇宙専攻
岩瀬研究室所属
講師(任期付)
寺嶋真伍